ふくちゃんの「暇つぶしの独り言」     14-7-1 
      「荒事・曽我物」の江戸は実事で男性的なものが好まれたといいます。当時の東西の気性を表していたのではないでしょうか。
 「京の着倒れ、江戸の穿き倒れ」といいますが、大坂にも派手好みで豪華を極めた時代がありました。とは言え、江戸の歌舞伎役者追随の熱狂に較べると、覚めた勘定高さが大坂には残っていたようです。
こういった文化の違いを、「武士のまねする江戸、サムライ嫌いの大坂」、「消極的・保守的・内陸的な関東は源氏、積極的・進取的・海洋的な関西は平家」と一刀両断する小気味の良い切れ味もこの本の魅力でしょう。
 全編を通じてやや上方びいきの印象は拭えませんが、「浪速情緒の思い出はいっぱいある。過去が私の脳裏を去来してやまない」と、自らの胸中を吐露する著者なのですから、やむ得ないことなのでしょう。  


「関西と関東」

宮本 又次


文芸春秋

平成26年

1580円
  宮本又次先生は、私が学生だった頃、経済学部を代表する看板教授で、既に日本経済史の大家でした。その先生が浪速の民衆風俗をエッセイ風に書き溜められたものを一冊に纏めたのが、この「関西と関東」です。
 風土環境・災害・食物・服飾・芸能・方言・気質の七章からなる「大坂・江戸の比較文化史」とも言える著作で、「食物」に最も多くの紙数が割かれ、これに「芸能」「服飾」が続くといった構成になっています。
 「食倒れ」の本場大坂は、町人が商取引の手打ちに料理屋を使う習慣から、江戸は参勤交代の武士の社交から食文化が発展したといいます。また、大坂は「鯛」、江戸は「鰹」(勝男武士)が好みだったようですが、大坂は安くて旨い旬を大事に、江戸は初物に狂奔する。大坂の合理主義、江戸の見栄が見え隠れします。
 歌舞伎では「和事・心中物」の上方は繊細で女性的、

 武士のまねする江戸、サムライ嫌いの大坂