ふくちゃんの「暇つぶしの独り言」     14-8-1  
         孫文と彼等に共通するのは「大アジア主義」ですが、編者の王柯教授は、孫文の「滅満興漢」(清朝を倒し、漢民族国家を起こす)の民族主義と日本側の「満蒙への優先権の獲得」の利害が一致したのだと指摘します。
 当時の中国は、清朝政府も含めて、いち早く民族国家を確立した日本から「日本の咀嚼した西欧文明」を吸収することに懸命でした。在日官費留学生も二十世紀初頭には七千人にも達して、教育制度の改革・新しい社会階層(官僚・軍人)等の形成に努めたのです。日本書の訳出…結果として日本語の中国語化も進み、憲法・議会・自治・義務・自由等の用語は一般化したのです。
 王柯教授は「両国関係の重要性再確認と東アジアの歴史の様々な側面・重層性を明らかにし、真の歴史の意義をより深く理解して貰うこと」と本書の目的を述べています。今後の日中関係にとって重要な提言でしょう。 


辛亥革命と日本」

王柯編

藤原書店

2011年

3800円
  「歴史を忘れる民族は愚かな民族である」とは周恩来の言ですが、悠久の歴史を通観した至言といえます。
 明治維新に遅れること四十年、中国は辛亥革命(1911)で近代国家への第一歩を印すのですが、多くの日本人が関わっていたことはあまり知られていません。
 本著「辛亥革命と日本」は、革命百周年(2011)記念事業として日中十一名の研究者が、数多くの一次史料を使って革命の謎とされていた部分も含めて、その思想的背景を解き明かそうとしたものです。
 革命の主役であった孫文・黄興・宋教らは長期にわたって日本に滞在して、日本政府・軍人・民間団体・個人と交流を持ち、生活費をはじめ軍事費・武器購入・人脈形成等の支援を受けていました。特に濃密な交わりを持ったの「退役軍人グループ・黒龍会」の青柳勝敏・内田良平・頭山満・宮崎滔天等でした。



辛亥革命百周年を記念して