京都の名店御三家を訪ねる。         07-8-7記            A
 千年の古都・京都は美食の聖地である。雅びな食文化の根付いた土地柄の故に蕎麦のような素朴な食はなかなか市民権
を得ることが出来なかった。京都の老舗蕎麦屋では麺そのものよりも汁や具に力点が置かれ勝ちであった。京料理の美味さ
を支えるのが「出汁」であることを考えれば当然なことだとも言える。また京都の節分には地元の蕎麦屋有志が出張茶屋を出
し参詣客に「福そば」を振舞うことが伝統行事になっている(吉田神社)。そんな中で十数年前、数店の蕎麦屋が「野立て蕎麦」
を披露して話題を呼んだ。それが京都の蕎麦職人に火をつけたのか、その後も「麺にこだわる職人」が誕生し続けている。職
人の町・京都。親方の技能を弟子が盗むという形で暗黙知が伝わって行く。蕎麦屋の世界に残る職人の血を大切にしよう。
   虚無蕎望 なかじん(京都東山)     手打ち蕎麦 かね井(京都北) じん六(京都北)
 古い商店街にある蕎麦屋。一時間半も待たされる。だが中に入ると客応対は良好。蕎麦はやや柔らかいのだが味がある。ワイン、シャンパンのほか寿司、天麩羅もあリ驚いた。    
 古い町家を改造した店。看板もよく見ないと分からない。開店中なのか閉店中なのかも。ご主人は元広告クリエーター。蕎麦はプロ筋でも評価が高い。割り箸は使わない。   北山通りすぐ。屋外で30分待ち。「蕎麦三昧」は茨城・山形・福井産蕎麦を同時に楽しめる。天井の高い木造の家。ご主人を慕う若手は多い。 蕎麦打ち一言アドバイスは「練りを少なく」でした。
戦国時代の蕎麦屋  現在蕎麦屋は群雄割拠の戦国時代である。江戸前の「藪・更科・砂場」等の老舗から、片倉康雄氏
の蕎麦道場に学んだ一茶庵系、二十年ほど続く脱サラ・ニューウエーブの蕎麦屋が、夫々のこだわりを持ち自分の世界を作っ
ている。蕎麦好きには堪えられない時代に偶然ぶつかった。江戸時代、江戸には数千の蕎麦屋が軒を連ねていたというが、
現代もそれに近い状態。真の競争と淘汰はこれから始まる。産地直送玄蕎麦、自家挽き、十割、九一、二八の打ち方から、吟
醸・純米日本酒、そばがき、そばみそ、板わさ等の酒肴類は勿論、立地、建屋、室内装飾に至るまで夫々が独自性を競ってい
る。蕎麦屋の真のサバイバルはこれからが本番だろう。一人応援団の団長として行く末を確りと見届けたいと思うのだが。
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