世界の蕎麦料理(2)・・・フランス・イタリア・スロベニア            15-2-1
ミレーの「蕎麦の収穫 夏」にも描かれているように、昔からフランスは世界有数のソバの産地(現世界第4位)であった。「ガレット」はブルター
ニュ州の郷土食であったのだが、現在ではフランス・そば料理(クレープ)の代表となっている。イタリアのソバ産地は北部の山間に限られてい
て産量は少なく、そば料理もバルテリーナ地方(ミラノの北)の名物「ピッッオケリ」が唯一といえよう。パスタの国らしく幅広の線状麺(日本の蕎
麦切りに近い)である。スロヴェニアはオーストリア南部にある人口200万強の小国であるが、ソバは幅広く利用されている。日本の様な線状麺
は無く、パンケーキ風の「ズリヴァンカ」・そばがき風の「ジガンツイ」やソバの実を詰め込んだソーセージ等がある。各国ともソバ粉を増量・風味
を変えるために混ぜて使う(パン・パスタ・クレープ等)ことは多いのだが、ソバ固有の料理となると残念ながら数少ないのが現状のようである。
 
サラザン(京都・下京)  ILVIALE(京都・二条)  ピカポロンツア(京都・太秦)
オーナーの橋本陵加さんは、京大・人間・環境
学研究科修士で「京都女性起業家賞 京都府
知事賞」を受賞された。大学時代の研究対象であったソバを普及させることを思い立ち、開店をした変り種(失礼)。現在は栽培から小売までに携わるこだわりの人である。要注目だ。
イタリア料理店開店して間もないのに既に京都で三店舗を展開する。シェフ・渡辺さんは自ら
イタリアを食べ歩き、イタリアの食文化を紹介
するのが使命であると考える若手のホープである。月ぎめでイタリア郷土料理を紹介してい
る。蕎麦粉もイタリア産を使用する。
オーナーのイゴール・ライラさんは京都大で生
体数理学を学び、日本人女性と結婚して日本
で唯一のスロベニア料理店を開店。ピカポロン
ツアはスロベニア語で「てんとうむし」のこと。
友人の友人が在日スロベニア大使館に勤務し
て、その方の紹介で特別メニューに恵まれた。
 
ソバの呼称 蕎麦の学名はラテン語で「ファゴ・ピラム」(ブナの実に似たコムギ)という。ブナにまつわる呼称は英語(Buckwheat)、独語(
Buchweizen),ポルトガル語・デンマーク語・ギリシャ語にある。なるほど、ブナの実に良く似ている。これがフランス語ではSarssin、イタリア語
ではGrano Sayaceno(サラセン人のコムギ)になり、ロシアでは「グレチーハ」(ギリシャの穀物)となる。これらは、ソバをサラセン人・ギリシャ
人が伝えたことを指すのか、ソバに対する蔑称なのか定かでないが、ソバ伝播の歴史と無関係ではない筈だ。中国語では蕎麦(チャオマイ)と
いい、尖った稜のある麦を意味し、韓国語では「メミル」(山の形のコムギ)という。日本語の蕎麦が「尖った(稜のある)ムギ」を指すことは言うま
でもない。中国・韓国・日本がいずれもソバ粒の三角錐の形状を名前にしているのは面白い。ついでにスロベニアではAjda(アイドゥカ)という。
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