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「唐衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして」(万葉集) 白村江の戦いに敗れた倭国は634年に九州北部と島嶼に防 人を送り守りを固めることになるが、古今を問わず対馬は大陸との貿易中継点であり国防の最前線でもあった。本土から132km、 韓国まで49.5kmの国境の島で89%は山間部で照葉樹林に覆われている。ソバは縄文時代後期に中国から朝鮮半島を経由して伝 来したというが、荒地に強く水に弱いので、岩がちで平地の少ない対馬に適しており「木庭作(コバサク)」と呼ばれる山の斜面を利 用した粗放的な焼畑農業で栽培されていた。稲作の少ないない対馬では、栽培期間(75日)が短いソバは格好の自家消費用穀物と されていたが、その木庭作も昭和40年頃には環境保全を理由に島内から姿を消してしまった。現在は平地の畑で栽培されている。 |
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「対州庵」 15-5-25 | 上段:「対州蕎麦」と「ろくべえ」 下段:「いりやきそば」 |
上段:在来種の玄蕎麦 下段:「蕎麦道場の風景」 |
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対馬には三軒の蕎麦屋がある。「あがた の里・匠・対州庵」・・・いずれも蕎麦打ち 体験が出来る店内設計になっている。した がって比較的大型な店舗である。代表的 な品書きは「盛り蕎麦・いりやきそば・ろく べえ」で外に「そばがき」等も揃っている。 |
対州そばは十割、味が濃い。左の「ろ くべえ」はサツマイモの澱粉を使ったも ので、そば風の麺で、ツルッとした食 感。下段の「いりやきそば」は対馬伝統 の「いりやき」(肉・魚に野菜を加えた寄 せ鍋)の最後に蕎麦を加えて食べる習 慣があり、その独立料理。 |
在来種の玄蕎麦。中国雲南高原の蕎麦 は「秋蕎麦」(夏播きの秋収穫)で、対州そ ばも典型的な秋蕎麦。選抜育種を続けた ので現在では、日本で一番原種に近いソ バだと言われている。下段は蕎麦道場。 観光団体客向けの設備と思われる。 |
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木庭作と対州そば 対馬の天然記念物「ツシマヤマネコ」の姿を目にする機会が少なくなくなったという。落葉樹・照葉樹林 が伐採され針葉樹植生が行われたため山が荒れ、ツシマヤマネコの餌であるねずみ等の数が減少したことに起因すると言われる。 木庭作(焼畑)による遷移段階の樹林が広がる対馬の原風景こそツシマヤマネコの棲み易い環境であったのだ。2011年の夏に、こ の伝統的農法を復活させようと、山を開き火を入れソバ種が播かれ収穫された。風味のよい美味しい蕎麦であったという。対州ソバ は本土の蕎麦と比べると小粒で、粉は赤みを帯び、打つとコシが強く味も濃い。本土ソバと同様、対馬でも他種との交雑・品種改良 が進み本来の特性が失われつつあったが、県総合農林試験所の種子選抜により、現在では日本で最も起源型に近いと言われる。 |
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