西宮・芦屋近郊の名店を探る(兵庫編2)        8-8-5記
蕎麦は昔から度々文学に登場する。例えば夏目漱石・池波正太郎江戸っ子の「気質と粋」を愛したがゆえに蕎麦をしばしば作品
に登場させることが多かった。
松本清張は蕎麦屋の二階で「波の塔」を書き下ろした。また俳諧の世界にも蕎麦を題材にしたものも
多い。
可憐な白い小さな蕎麦の花に心惹かれ「そば切り」の素朴さと孤高さに「侘び寂び」を感じ取ったのであろう。「そば時や月の
しなのの善光寺」(一茶)
 勿論芭蕉・蕪村にも数多く名句が残っている。さて、芦屋といえば谷崎潤一郎が思い出される。谷崎は美
食家であった。京都には「いづう」「たん熊」など谷崎がこよなく愛した店があった。が、関西の蕎麦は口に合わず、「神田やぶ」が変
わらず第一のお気に入りであったといわれている。
現在の西宮・芦屋界隈の蕎麦事情を”江戸っ子”谷崎に見せたかったものだ。
土山人(芦屋) あんばい(西宮・夙川) 08-4-10 かぶらや(芦屋・打出) 08-4-11
JR芦屋と阪急芦屋の中間にあり便利。無
垢の木と陶器をあしらった内装。「土山人」
の名は、陶器の作者の号をつけたとのこ
と。せいろ蕎麦を食したが、
喉ごしの良い
バランスの取れた蕎麦。居酒屋的風情が
あって、いちど夜訪れたい店
である。
JR夙川駅近くにある。桜見物を兼ねての
訪問だった。そばがき・出汁巻きで春鹿を
嗜む。締めに田舎そば(粗挽き十割)、透
明感のある細切り。味もコシも強い。ご主
人に会いたいというと、「嫌がります」と断
られた。
阪神・打出駅徒歩3分。狭い路地を入った
ところで写真が撮れない
。蕎麦は薄緑色
の極細切り。味は薄いが腰のある出来上
がり。日本酒に「5酌」があるのが嬉しい。
ご主人は脱サラ、真面目な人柄。メニュー
の最後に「蕎麦の粋な食べ方」がある。

      
蕎麦の花 種まきを終え一ヶ月ほどたつと蕎麦の花が咲く。白い可憐な花である。一面に広がる蕎麦畑は壮観で美しい。芭蕉は
「蕎麦はまだ花でもてなす山路かな」と詠んだ
。蕎麦というと一般的には「白い花」と思いがちだが、実際には「赤い花」「薄緑色の花」
もある。蕎麦には「普通そば」「韃靼そば」「宿根そば」の三種があって、このうち「韃靼そば」
は苦味があるので日本で栽培されたのは
そう昔の話ではない。
この花が「薄緑色」だともいう「普通そば」は殆どは「白い花」だがネパールやブータンでは「赤い花」をつける
そうだ。
栽培される土地によって同種でも花の色が変わるのだ。気温・気温差・日照量・地味が影響するらしい。日本にも希少ではあ
るが赤花の在来種があり、元信州大・氏原教授が十数年の歳月をかけて開発した新品種「高嶺ルビー」「グレートルビー」もある。
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