個性派の蕎麦職人を訪ねる                   08-10-7記           
 蕎麦切りは日々進化している。機械打ち全盛の中、荻窪の「本むら庵」、片倉康雄氏率いる「一茶庵が「手打ち」を始めたの
が昭和40年代のこと。つなぎを多く入れたこれまでの蕎麦に比べ、味の濃い「手打ち二八蕎麦」は瞬く間に世の人気を集め全国
を席巻した。しかし温湿度管理が不十分な製粉・流通に飽き足らない先進的な蕎麦屋は玄蕎麦の「直接買い付け」と「自家製
粉」へ踏み切った。これによって蕎麦屋は新鮮で好みの粉を入手することが可能となり、ニューウエーブの台頭を招き、脱サラ蕎
麦屋を続出させたのである。現在は更に多様化の時代に入り、石臼の改良・篩い分け等によって「手挽き」「挽きぐるみ」「粗挽
き」「無篩い」等の蕎麦切りが次々誕生して止まるところを知らない。まさに開闢以来の蕎麦戦国時代を迎えているといえよう。
百々夜月(奈良)  07-10-25 久庵(神戸) 08-9ー19 夢屋(大阪)  07-3-9
手挽きにこだわり毎日10食限定の極粗蕎
麦を作る。
透明感のある太切りでやや柔ら
かめの蕎麦だ。
 品書きに「水ごね手臼粗碾き田舎蕎麦」
とある。「玄蕎麦から手挽きした蕎麦十割」
汁につけず、山葵と塩だけで食べご主人
の意欲に応えたものである。
 昼間のサラリーマンで混雑する繁盛店。
ご主人はもとテレビのカメラマン。職人らし
い拘りの強い人。
素性の知れない蕎麦粉
は使えないと、奈良に蕎麦畑を持ち自家
栽培、石臼も自分で作ると言う。
好みの蕎麦屋 蕎麦職人には個性的な人が多い。前職がデザイナーやカメラマン等の「カタカナ脱サラ」族が多いのも特徴
の一つである。何故か。修行期間が短くてすみ、開店費用が少ないことも大きな理由であろう。が、エンド・トゥ・エンドの自己完
結型(蕎麦の栽培から製粉・蕎麦打ちまで)が可能な仕事だということを見逃してはならない。つまりは「拘りの人」には堪えられ
ない魅力を持った仕事なのだ。この種の人が作る蕎麦屋には特有の特徴がある。
第一に、蕎麦への強いこだわりを感じさせ店
であり、シンプルで挑戦的な品書き大事にすること。第二に、外界とは違った時間が流れる非日常的な空間を演出しているこ
と。最後に、客との対話
ではないかろうか。かくして、店主の価値観にお客が共鳴し、蕎麦屋が主客交歓の場になるのである。
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