「霧下そば」に科学のメスが入る                  16-2-1
江戸末期頃から今日まで「霧下そば」の呼称は美味しい蕎麦の代名詞として使われて来た。分かり易くいえば、天気の悪い処で
出来たそばが美味いということである。だがこれは経験的に知られていることであって科学的に実証されたものではなかった。近
年、信州大学の井上直人教授等の大規模な実験によって、産地の環境(気温・日照時間・相対湿度)とそばに含有されるアミロー
スや粗たんぱくの量の関係が明らかになった。つまり気温が低く・日照時間が短く・湿度が高い場所ではアミロースの少なく、たん
ぱく含有の高い「軟質の粘性の高いそば」が、その反対の環境下では「硬質のコシの強いそば」が出来ることが裏づけされたので
ある。産地とそばの粘性の関係が分かったことは実用上大きな意味がある。イネはソバとは全く正反対であることを追記しておこう。
松下(大阪・北区) 15-12-15 上段:「松下」・ニ八
下段:「斐川」・ガレット
斐川(大阪・石橋) 15-12-27

パリの日本そば屋「円」の10年間勤務を
終えて昨年帰国、7月に新規開店したと
ころ。高橋邦弘氏の門下生。端正なニ八
を打つ。品書きは「せいろ」の一品だけ。
玄ソバから自己完結型を貫く。祈る成功。
店名はご主人の苗字から取ったもの。
  前職は陶芸教室経営。考えるところあっ
てそば屋に転業する。ターゲットは女性。
超粗挽きの十割。切り幅は三種(普通・
太切り・超太切り)ガレットとのセットメニ
ューが嬉しい。ガレットも超粗挽き十割。
住宅街のなかにある小奇麗なお店だ。 
 
そば好きの達人 雑誌「太陽」(1998・12)で故杉浦日向子さんのエッセイを読んだ。私など遠く及ばないそば好きの達人の域にある。
彼女の文章を摘み食いすると「私がそば屋に行く時間帯は、いつも、午後二時から四時の間。昼食の喧騒が去り、夕刻すぎの飲み屋状
態になる前。ぽっかりとした昼下がり。はあ良い午後だ。ひとりふたり焼きのりをつまみつつ手酌を傾けている。特別なものはなにも無い。ただな
んとなくいいのだ。いいいそば屋には居心地のいい午後がある。こんなにくつろげる場所は銭湯とそば屋ぐらいだろう。四十分もあればそば湯も
飲んできちんと堪能できる。のれんをくぐれば町はほどよく暮れなずみ、夕日が頬を染め、気持ちはふっくり満ちてくる。まるで湯上りの爽快感。
だから長湯は野暮なのだ。これからも、ずっとよろしく」 本当に惜しい人を亡くしたものだ。この達人の域に達するにはまだもう少し時間が要る
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