在来種「横田小ソバ」の復活               16-6-1    
神話の里・奥出雲は「製鉄とソバ」の国であった。古墳時代に朝鮮半島をわたって伝えられた製鉄技術は奥出雲で開花する。中
国山脈の良質な砂鉄と豊富な木材、そして斐伊川の豊富な水がそれを支えたのである。昼夜寒暖の差が激しい中山間地(標高
200〜700m)で、木材が切り出された跡地はソバ栽培(焼畑)に格好の地でもあった。時は流れ、たたら製鉄は高炉の近代製鉄
に席を譲り、在来ソバはより多収な他府県産(信州・常陸)に駆逐されていった。「横田小ソバ」の再生の取り組み始まったのは
平成15年の「ソバによる町興しプロジェクト」からであった。県農業技術センターに残っていた僅か1kgの在来種ソバ種から数年
かけて栽培・選抜をくり返し現在ようやく栽培面積が9haを占めるにまで至った。毎年11月「奥出雲そば祭り」が開催されている。
姫のそば「ゆかり庵」 16-5-25 「横田小そば」と「たたら製鉄」 亀嵩駅「扇屋」 16-5-26

稲田神社境内に建つ「ゆかり庵」。一風庵
と共に奥出雲を代表的する蕎麦屋。信濃
大そばや常陸秋そばの進出で絶滅の危
機を迎えたが、官民挙げての町興し運動
に押されて「横田小そば」が蘇った。
上段:横田小そば。挽きぐるみの田舎
そば硬くてやや太め。下段:「たたらと
刀剣館」の前に建つ。ヤマタノオロチ
を現した造形。ヤマタノオロチの尾か
ら太刀(くさなぎの剣)がでてきた。
 
JR木次線の亀嵩駅(松本清張の「砂の
器」で一躍有名になった)は民間委託駅
で、蕎麦屋の主人が事実上駅長を兼ね
る。一日上下併せて10本程度の列車が
通過する。全国からそばファンが来る。
 
長寿の島・隠岐 島根半島から北方約50km、日本海に浮かぶ隠岐の島々、その数180余という。縄文の昔から人が住み、
本土との往来も盛んであった。また隠岐は沖縄に次ぐ長寿の島として有名で、長寿博士・近藤正二著「日本の長寿村・短命村」
に詳しい。野菜・海草・大豆・雑穀を常食とし、そばも昔から家庭で打たれていたと伝えられる。島根県の頓原遺跡(BC7〜8世紀)
ではソバ花粉が、タテチョウ遺跡(弥生時代)からはソバの種が発見されている。朝鮮半島→隠岐→山陰地方で直接伝播したと
も考えられる。全国でも珍しいそば打ち踊り(そば打ちの手順)「どっさり節」が隠岐民謡として残っている。隣の石見の国には「三
瓶そば」がある。三瓶山(1126m・大山火山帯)からの火山灰を養分にして育ち、小粒だが粘りの強いのが特長といわれている。
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