そば食で創ろう新しいライフスタイル  そば前を楽しむ       16-7-1   
「銭湯があがれば蕎麦の代もあがり、蕎麦の代が下がれば湯屋も下がる」と岡本綺堂が言った。両者は近しい関係にあったよう
だ。そば評論家岩崎信也は「銭湯の近くには必ず蕎麦屋があった」と言う。働きの疲れを銭湯で流し、近くの蕎麦屋で一杯ひっか
けて蕎麦で小腹を満たし一日を終える、これが江戸っ子の一つのライフスタイルであった。自家風呂が普通になった現在、「銭湯
+酒+そば」はないが、「そば前(酒+そば)」は今も残る。英国には「アフターヌーンティー」、仏国には「アペリティフ」で優しい時
の流れを楽しんでいる。さすが歴史と文化の厚みを感じさせる習慣だ。
そろそろ我が国でも、時間(時計)に支配されるのではなく、
心の豊かさを実感する時間を夫々が持つべき時ではないか。「そば前」を楽しむのも一案だろう。ただし長居と深酒は禁物である。

ぐーちょきぱー(大阪・杭全)
16-4-29
 
アフタヌーンティー」と「そば前」 志ばらく(島根県安来市) 16-5-26

昨年、杭全に誕生した「そば掻専門店」
名店「凡愚」(大正区)で修業、凡愚移転
を機会に独立した。女性店主が一人で頑
張る。目の前でそば粉を5段階の粗さに
小型製粉機で挽いてくれる。
英国の「アフタヌーンティー」は豪華でキ
ラキラ型。「そば前」は質素で目立たな
い。和風の良いところ。アフタヌーンティ
ーは、深夜にわたる社交界への腹準備
。「そば前」は小腹をおさめるスナック。
 
「新そば会」のメンバー、昭和25年創業の
老舗である。創業者(初代)が歌舞伎ファ
ンで店名を「しばらく」にしたという。民芸
そばというだけに、 なまこ塀の古風なつ
くり店内は民芸品でいっぱいである。
 
 
箸とそば 我が国の箸食の起源は7世紀の遣隋使の時代に遡る。小野妹子が中国から箸を持ち帰り宮廷で使われたのが最初
という。箸食文化は中国・台湾・朝鮮半島・ベトナム・チベットなどアジア各地に広がるが、スプーンとの併用が普通で、箸のみを使
うのは日本独特の食文化である。粘りの強いジャポニカ米を食べるに適したのはもちろん、おそらく麺食の普及も箸がなくては実
現しなかったと思われる。それだけでなく、日本人の持つ器用さも幼少からの箸使いに由来するといわわれるほどである。余談だ
が、箸は「はし」と読むが、同音のことばに「梯・嘴・階・端・橋」(広辞苑)がある。古くは「間」とも書いた。「はし」は間を繋ぐという意
味がある。高所とと地上を繋ぐ「梯子」、港と船を繋ぐ「艀」、「橋」はもちろんだが、「箸・嘴」も食物と口を繋ぐ役割を果たしている。
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