蕎麦は日本のスローフードの代表である             17-3-1        
スローフード運動発祥の地はイタリアである。1986年ローマの中心地「スペイン広場」に米マクドナルド社が新規出店したことが契
機となって、イタリア全土に「スローフード」運動が広がった。ちょうどその頃、日本では大分県平松知事が「一村一品運動」を始めて
いたのである。両者は「多様な伝統郷土・食文化」を守ろうとする点で同心円状の運動であるといえる。根底には、経済成長とグロー
バル化の中で失われつつある「自然と人間・人間と人間の関係修復」の思想が流れていると思われる。世界中で食されている普遍
性を持ちながら、日本で独自発展を遂げた「そば」は格好の素材であった。数千年の歴史を持つ穀物として、手作り(手打ち)・本物
(挽きぐるみ)志向の「そば」が郷土食の代表選手であって不思議はない。全国各地に「そば」による町興し運動が展開されている。
嘉玄(三重県津市) 15-8-5 上段:「スローフード運動」のシンボルマーク
下段:江戸のかつぎ(出前)の姿
つぼみ庵(大阪・箕面) 14-10-24

JR阿漕駅の近く懐石料理を約十年、祇
園のレストランで2年料理の基本を学び、
現在の蕎麦屋「嘉玄」をオープンした。
「嘉」は美味しい料理を意味する「嘉肴」
から、「玄」は玄ソバから採ったという。
 カルロ・ペトリーニ(1949~)率いる世界ス
ローフード協会は「スローフード」に相応し
く「蝸牛」をイラスト化したロゴマークを世
界共通とする。下段:江戸・明治時代の
「かつぎ」の姿。福山は蕎麦屋の名前。
箕面駅から徒歩7~8分、箕面滝に至る
道を歩く。ミシュラン二つ星料亭「一汁一
菜うえの」の経営する蕎麦屋。店主は奈
良桜井で蕎麦打ちを学ぶ。席は全てカウ
ンター、季節には目前に紅葉が見える。
 
 
蕎麦屋の只今 「仕出しには、即座麦めしニ八そば、みその賃づき茶のほうじ売り」(「享保世説」・享保13年・1727)が出前の初
見だという。商家の晦日そばも出前だった筈。当初は出前は大名・寺院・大店等の大口に限った。電話の無かった時代のこと、小間
使いが注文に走ったのだろう。明治になり「蕎麦屋の只今、紺屋の明後日」という諺が”いい加減な言い訳”の代名詞に使われるほど
にまで「そばの出前」は一般化していたのだ。また出前は、蕎麦屋の競争回避の手段としても使われたという。つまり、近隣に店売り
の店が出来るとお客の取り合いになるので、「店売り専門」と「出前専門」に分かれたというわけである。これには町の年寄・顔利きが
関わったとも伝えられる。競争回避の高度戦略が既に江戸・明治にあったのだ.。共存共栄の知恵だったのだろう。面白い話である。
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