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多種多様な「グルメガイド」が世の中を賑わせている。テレビ・雑誌・ネットで見かけない日は無いと言っても決して過言ではない。 江戸時代中期〜後期頃(1750〜)にも「評判記」が流行した。食べ物屋に止まらず多方面にわたり、「江戸名物評判記集成」の編 者・中野三敏によれば、現存するもの七十余点を数えるという。その一つが三都(,江戸・京・大坂)の名物店の番付を紹介した悪 茶利道人著「富貴地座位」(1777)である。その麺類之部を見ると、道光庵(浅草)を筆頭にして「いせや・ひょうたんや・山田屋・ 福山(歌舞伎に出てくる常連蕎麦屋)・正真」が相撲でいう三役に、前頭筆頭にはお馴染みの「薮そば」(雑司ヶ谷・かんだやぶの 前身)等が並び、大坂(浪花)の部には「和泉屋(砂場の前身)」と寂称庵(道頓堀)の名が見える。いつの世も競争は激しいのだ。 |
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古拙(東京) 17-4-22 |
「富貴地座位」と「福寿草」 | まつもと(京都) 17-5-11 |
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かつて銀座で名声をほしいままにした石 井仁氏がプロデュースしたお店である。 湯島のホテル江戸屋1F(B1?)。極細 の十割「水腰そば」が名物だという。 |
高槻市立図書館在架の中野三敏編「江 戸名物評判記集成」所収。例えば、和 泉屋の評判は「砂場すなばとうたハれ ていさましげ也賑ハしきを風味とし て」と活況を伝えるが味には触れず。 |
京都の名店「じん六」で6年間修業を積ん で2013年に独立開店した。河原町から直 ぐなのだが路地裏なので辿り着くのが難 しい。店主松本宏之さんは無口な職人気 質。「そば 酒」のタイトルのままのお店。 |
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初物評判記 江戸っ子の初物好きは常識を超えている。歌舞伎の中村歌右衛門が一尾三両(30万円)で「初かつお」を買った た逸話が残っている。「女房を質に入れても食え」とばかりに、江戸っ子は鰹を求めて狂奔した。初物は鰹だけではない。初物評 判「福寿草」(安延五年・1776)食類之部には、極上上吉に「初鰹」が、以下「初鮭」「新酒」と続き四番目に「新そば」が出てくる。 「初物を食べれば75日長生きする」の俗信もあって、貯蔵技術の乏しかった当時は「初物」に好奇の目が注がれたのは自然とも いえる。が、そこには江戸っ子の見栄坊気質が垣間見える。上方の旬を大事にする合理精神とは一線を画するようだ。なぜ鰹な のか疑問も残る。武士社会だから「勝男武士」なのだともいうし、瀬戸内には鰹がいないことから上方への対抗意識だともいう。 |
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