東京で評判の話題の店を訪れる          09-2-15
「江戸は蕎麦」と言われるが江戸時代中期までは「うどん」が優位にあったところが文化・文政時代になると「蕎麦」の黄金時代
が到来する。
これには、澎湃と興ってきた「江戸っ子気質」が大きく関わっていたと言う。政治の中心ではあったが文化的には上
方の後塵を拝していた江戸。その上方コンプレックスが江戸前意識(寿司・天麩羅・うなぎ
・・)を芽生えさせ、江戸っ子気質を生
みだした。
江戸っ子の美意識の中核は”粋”である。九鬼周造氏によれば”粋”とは「媚態であり、意気地であり、諦めだ」と言う
(「いきの構造」)
蕎麦が江戸っ子に受け入れられたのは、蕎麦の持つ「単純さ・壊れやすさ・はかなさ」が時代の美意識に適合
したからだ、と思われる。
蕎麦の趣味食化が進み日本酒とのマリアージュ・独特の食様式が出来上がったのではないか。
鞍馬(西荻窪)  08-11-13 辻そば(新橋)  06-12-7 川上庵(青山)  06-12-9
 商店街の角地の静かな佇まい。店内中
央に電動石臼がある。常陸秋蕎麦・有機
栽培とある。「箱盛そば」と「甘皮そば」を
注文。前者は弾力性が強く、後者はやや
太く黒い田舎蕎麦。ご主人は「永坂翁」の
出身だが二八ではなく十割を打つ。
 珍しく友人と連れ立っての夜の訪問とな
る。鴨会席で美味しい日本酒を頂く。締め
に「越前おろし蕎麦」・・太い田舎蕎麦。辛
味大根が飛び切りに辛い。アルコールが
過ぎたせいか記憶があまり無い。写真を
撮るのも忘れたのでネットから拝借。
 表参道に近い。内装はシンプルモダン。
ジャズが店内を流れる。奥にバーカウンタ
ーがある。夜は酒場になるらしい(午前4時
まで営業)。蕎麦は毎朝、軽井沢の本店か
ら届けられるという。
二八は喉ごし抜群。信
州川上村の蕎麦粉を使う。
蕎麦好きと蕎麦屋好き 故杉浦日向子さんの小文に「そば大好き人間には・・美味い蕎麦のためには、いかなる悪条件を
も乗り越えて、ひたすらまい進する求道者型と食後に、湯上りのようなリラクゼーションを堪能する悦楽主義者型・・がある。前者
が”そば好き”、後者が”そば屋好き”である」とある。流石に上手く言い当てている。蕎麦を心から愛した杉浦さんならではの文
章である。
「そば好き」は挙句の果ては蕎麦屋になるが、「蕎麦屋好き」は決して蕎麦屋にはならない。さしずめ私も杉浦さんと
同様「蕎麦屋好き」の系列に属するのであろう。蕎麦屋の中に漂う過ぎた時代の残香を嗅ぎ取りながら、豊な時の流れの悦楽と
居場所を見つけた安らぎを大切にしているのだ。蕎麦屋の親爺と交わす蕎麦談義もまた欠かす事の出来ない味わいなのだ。
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