山形蕎麦街道を巡ぐる(2)  次年子の蕎麦を楽しむ    09-10-20
「板蕎麦」の杉の柾目で作られた箱は、農作物収穫時等に大勢がいちどに蕎麦を食べる際「長板」の上に盛り付けたことに由来する。
大石田ではお客があると家の主人が手打ちで「そば振る舞い」をする独自の「もてなしの文化」があった。また最上川最大の川岸(港)
であり酒田・山形・米沢を結ぶ中継点として「北前船文化圏」の中にあった。蕎麦屋に必ず「鰊」が置かれているのはその名残であろ
う。中心地から西へ5`ほど山間部へ入ると「次年子(じねんご)」という村がある。昼夜寒暖の差が激しく蕎麦栽培の適地と伝えられ
る。「次年子」の名は「子供が生まれても雪が解ける翌年まで届けが出来ない」ことから付けられたと聞く。「大石田そばの里」は平成
13年に環境省「かおり風景100選」に選ばれた。そば時になると畑をはじめ街中全体が蕎麦の香りに包まれる風情になるともいう。
 
七兵衛(大石田市・次年子) 源四郎(大石田市・次年子) 蕎麦に付く漬物
山の斜面にあるので階段を登る。番号札
を貰って座敷に上がる。長机に座布団だ
け。品書きは「板そば・食べ放題」のみ。
出汁は「大根の絞り汁」にタレを加えて調
整する。お替わり自由は嬉しい。
 
来迎寺在来種の二八。粉をさわらせて貰っ
たが粗い粉だ。盛りはかなり多い。十割は
予約客のみという。8年前に脱サラして開
業。板そばにしてはやや細切り。十割はも
っと細切りという。
下段は、板そばに必ず付いてくる「漬物」。
蕎麦に漬物は珍しい。江戸蕎麦と異なり、
山形では蕎麦は主食であった。昔は積雪
すると村ごと孤立するのが常で漬物は貴
重な貯蔵食品であった。
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蕎麦祭り 蕎麦の収穫を祝って毎年全国で賑やかに「蕎麦祭り」が開催される。新蕎麦前線の南下に合わせ9月〜12月に集中す
る。代表的なものを挙げれば「幌加内そば祭り」(北海道・幌加内町)、「板そばまつり」(山形県・村山市)、「松本浅間温泉新そば祭
り」(長野県・松本市)、「神有月出雲そばまつり」(島根県・出雲市)等があり、首都圏では「金砂郷・常陸秋そば祭り」(茨城県・金砂
郷町)、「深大寺そば祭り」(東京都・調布市)等がある。山形の「板そばまつり」では60bの長板に330人が並び一斉に蕎麦を啜る
というし、盛岡の「全日本わんこそば大会」では大食い日本一を競うらしい。蕎麦は地域の伝統的食文化の代表として「町おこし・村
おこし」
に大きく貢献していることが判る。ところが全国の蕎麦消費量は2年連続で前年を下回っているというのも厳しい現実である。
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