京都で味わう郷土蕎麦・・信州戸隠蕎麦と出雲蕎麦    09-12ー16
戸隠は山岳信仰のメッカで平安の古より多くの修行僧が集まって来ていた。彼らは「五穀断ち」が決まりで「蕎麦」が携行食となって
いた。もちろんこの場合の「蕎麦」は現在の「そば切り」ではなく「蕎麦がき」「蕎麦団子」であった。「そば種」は仏教と共にわが国に伝
来し、寒暖の差が激しい戸隠は適地(標高1000m)として栽培が早くから行われていたと思われる。「そば切り」の始まりについては
定かではないが1709年戸隠神社の祭礼で「そば切り」が振舞われたという記録が残されている。戸隠流の蕎麦は「打ち方」だけでは
なく「盛り付け」にも大いに特徴がある。「水切り」をしないまま小分けして丸笊(根曲がり竹)に盛られる「ボッチ盛」(写真右上段)は戸
隠に見られる独特の様式である。戸隠五社に因んで5束にしたというが、本来の目的はひと口ずつ小分けし食べ易くしたものであろう。
 
實徳(京都・吉田) 阿国庵(京都・岡崎) 戸隠と出雲蕎麦
 
 
民芸調の店。椅子や卓も戸隠産の木を使
ったという。戸隠流の基本は七三。元々は
椀に蕎麦粉2杯と小麦粉1杯の割合(外5
割)であったそうだ。喉越しが良い。「室温
・湿度・加水量」が掲示されている。
 
「割子そば」がメインだが出汁は関西風。
うずらの卵を入れる食べ方を考案したの
は創業者(先代)の奥様らしい。よく噛ん
で食べる蕎麦。
上段が「ボッチ盛」、5束に分けられている
皿の上に丸笊。下段は新蕎麦の収穫を知
らせる「そば玉」、蕎麦屋の店頭等に飾ら
れる。秋の風物詩である。
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大凶作の蕎麦 夏の長雨と日照不足に加えて台風の襲来で全国的に蕎麦収穫量が激減している。蕎麦消費量の80%は
輸入なので蕎麦粉の供給に不安は無いが、本格派の蕎麦屋と蕎麦好きには淋しい話しである。元来蕎麦は気候の変動に弱く
豊凶の差が著しい。強風による倒伏・脱粒、霜害、長雨等が主な原因になる。また花数の割には結実が少ないので「生命力の
弱い穀物」とも言われる。ところが一方では、吸肥力・吸水力抜群で痩せ地でもすくすく生育するしたたかさを併せ持っている。
播種から刈り取りまで75日という短期生育も特徴で、土地を遊ばせない「繋ぎの穀物」(キャッチクロップ)として「たばこ」の後作
に活用されることが多かったが、そのタバコも禁煙の広がりと増税で先細り。自給率20%の国産蕎麦粉の危機は続いている。。
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