「越前おろし蕎麦」の宣教師・故宇野重吉氏    11-6-1
宇野重吉といえば劇団民芸の創立者であり戦後の日本演劇界のリーダーでもあった。半世紀も前に観た「火山灰地」(久保栄)
冒頭の深々とした朗読を今も思い出す。名優であった。その故宇野重吉氏の写真や書が多くの福井の老舗蕎麦屋の店内に飾
られている。無類の蕎麦好き、いや「越前おろし蕎麦好き」であった。帰郷や福井公演の際は毎日のように蕎麦屋通いをするのが
常であったという。「福井では雪と仏とおらが蕎麦」(宇野重吉)、もちろん「信濃では月と・・・」(一茶?・不詳)の句を読み替えたも
のではあるが、重吉氏の蕎麦と故郷・福井への深い愛情が偲ばれる。恐らくは蕎麦の打ち手であった母親の面影がそれに重なる
のであろう。長じて重吉氏を「越前おろし蕎麦」の宣教師・広報マンたらしめた秘密は彼の少年時代に隠されているに違いない。
御清水庵(武生) 11-4-29 ふる里(今庄)  11-4-29 清水(大阪・天六) 11-5-26
御清水庵と書いて”おしょうずあん”と読
む。JR武生から徒歩数分にある。狭い
店内に21席。入り口近くに水道の蛇口
があり地下からくみ上げた清水が常時
流れている。この水で蕎麦を打つという。
古い今庄の町の片隅にある。付近に酒造
会社が数軒あるのは水が良いせいか。先
代が亡くなり現在は娘さんが継いでいる。
暖簾・行燈・内装等の形はそのまま。蕎麦
への愛情も確かに引き継がれている。
大阪では数の少ない「越前おろし蕎麦」の
店。本場・福井で学び5年前に天神橋六丁
目で開店した。粉も辛み大根も福井産。お
ろし大根は絞り汁だけを使っている。麺は
歯ごたえある黒い(外皮挽込み)細切り。
蕎麦の効用 医食同源という言葉がある。「日常から良い食物を摂り病気の予防・治療をしよう」の意であろう。蕎麦は古くより
「健康に良い食物」として伝承され修行僧の携行食としても名高い。必須アミノ酸・ミネラル・ビタミン等の含有が多く米・小麦に比
べ優れていることが分かっている。またルチンが高血圧・動脈硬化に効ありとする研究結果も発表されているが、最近ではGIの
低い食物
として新たな注目を集めている。つまり食後の血糖値上昇が他の食品に比べ非常に緩やかなため膵臓の負担が軽減
され「糖尿病の予防に有効である」というのである。外にも味覚障害に効く亜鉛を多く含有している。蕎麦の効用については諸説
ありまだ十分に解明されているとは言い難いのだが、科学の鋭いメスによって実態が明らかになる日の早いことを期待している。
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