そば切り発祥の地は何処か?                    11-7-5
蕎麦切り発祥の地については従来から二説ある。中山道本山宿説(長野県塩尻市)、甲州天目山栖雲寺説(山梨県甲州市)、がそ
れだ。が、いずれも伝承であって確たる証拠が存在するわけではない。そこへ京都の相国寺、建仁寺・東福寺等の禅寺を発祥地
とする説が現れた。寺社に残された日記類を丹念に読み解き「蕎麦折」の文字を発見、これを「蕎麦切り」と推断したのである(「つ
るつる物語」伊藤汎著・1987年)。建仁寺開山の栄西は南宋より「茶臼・そうめん」を持ち帰ったし、円爾(東福寺開山)は「水磨の図」
(水車)をもたらした。相国寺・建仁寺・東福寺はもとより、蕎麦切りの初見で有名な定勝寺も臨済宗である。臨済宗と蕎麦の強い関
わりから考えて、京都禅林を蕎麦切り発祥の地とするのも満更故なきことではなかろう。証拠を想像力で補うことを許されたい。
杣屋(京都・相国寺門前町) 11-7-2 大本山相国寺(京都) 吉祥庵(木津川市)  11-4-7

 
地下鉄「鞍馬口」から数分、住宅街の中
にある。金・土・日の週3日だけの開店。女
性一人の経営。時間はかかるが丁寧な仕
事ぶりに感心する。蕎麦打ちの修業は有
喜屋でやったという。
上段:足利義満が金閣・銀閣とともに
1345年に建立した。室町幕府支配の象
徴であり、当時は高さ110mの大塔があ
ったが二度焼失し現在は無い。

下段は相国寺(ショウコクジ)総門。
京都・木津川にある浄瑠璃寺の入り口近
く。築百年の古民家がぽつんと建ってい
る。店主は元々は陶芸家。はっきりした美
意識の持ち主である。店内に作品も展示
されている。ぶっきらぼうな応接も独特。
白葱と青葱 蕎麦の三大薬味は山葵・刻み葱・大根おろしである。山葵と葱は毒消の、おろしは消化の薬効があるとされている。
白葱は「根深ねぎ」とも呼ばれ、根の部分は地中にあって光合成が無いため白くなる。青葱は地上に出ている葉の部分を使うので
「葉ねぎ」ともいう。蕎麦の薬味も関東は白葱、関西は青葱に大きくは分かれている。駅そば研究者・鈴木弘毅氏によれば、表日本
側は熱海駅以東が白葱、箱根を超えた三島駅では青葱になり、内陸部は山梨・長野・静岡県は白葱、名古屋は青葱になるそうだ。
日本海側はというと、新潟・富山・石川県までは白葱で、福井駅から青葱になるという(「駅そば読本」)。中間地帯の愛知県には白・
青半々の越津ねぎ・徳田ねぎがある。人間と自然が創りだす多様で柔軟な食の世界にはいつまでも興味の尽きることが無い。
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