伊奈高原に煌めく赤そばの里            12-10-7     
 ソバといえば可憐な白い花の群生が目に浮かぶ。中山間地を彩る初秋の心休まる風物詩の一つだ。氏原暉雄氏(信州大名誉
教授)がネパール・ヒマラヤ山麓の高地(3800m)で赤い蕎麦花に突然遭遇したのは1980年の9月のことだった。氏はこの瞬間を
「見事な赤い花が谷間一面を覆っているのを見た。まさかこれがソバの花とは信じられない光景だった」と述懐している。この時の
感動が後の「高嶺ルビー」育種の原動力になった。彼我の気候条件の差が大きく日本での育種には予想以上の困難が伴い新種
登録が受理されたのは1993年だった。その後20年、改良された最近種「高嶺ルビー2011」が燦然と輝く赤花を天空の下に広げる
様は真に異次元の空間と言う外に言葉が無い。仙台・長野・岐阜・兵庫・・・「赤ソバの里」は各地にその姿態を現しつつある。
瑠美庵(長野・箕輪) 12-10-4
赤そばの里(長野・箕輪) しみず(長野・塩尻) 12-10-3
農業組合が経営する蕎麦屋。蕎麦道場も
ある。ソバ粉は現地産の「高嶺ルビー」の
10割のみ。少し硬めのごわごわした蕎麦
だ。高原野菜の天婦羅との相性も良い。
伊奈高原・標高900mに広がる4.2haに一
面の赤そば畑。9月中旬〜10月中旬は観
光客で賑わう。そばによる町興しは見事
に成功した。(ポインターを写真の上に・・)
塩尻駅から500m。店内は二部屋20席。
「高ボッチ」(更科・挽きぐるみ・田舎の三
種)を頂く。色は順に黒くなる。粉は八ヶ
岳産。蕎麦湯はポタージュ系。
在来種・改良種 在来種とは、昔からその地域の風土環境に適応しながら栽培されてきた品種で、一般に小粒で単位収穫
量は少ないが味や香りに優れている。一方、改良種は主に在来種の弱点を克服することを目的として育種(選抜・固定)されたもの
で、現在栽培されている大半はこの改良種である。ソバは他家受粉植物であるために交雑が進みやすく、在来種は年々減少し絶
滅の危機を迎えている。が、最近その在来種の濃い味が人気を集めている。味が良いのは、気温が低く、日照時間の短い山間で
育ったソバは半熟でアミロースが少なく蛋白質が多いためであるという(信州大・井上直人教授)。一方、改良種では多収穫を目指
すものの外、ルチン含有量三倍の「サンルチン」、観賞用として「高嶺ルビー」「グレートルビー」等が育種され多様化が進んでいる。
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