日本列島を北上し再び南下するソバ前線        13-1-7                
 桜前線は春、紅葉前線は秋に日本列島を北上・南下する。いずれも日本が美しくなる季節である。ソバも同様に5月に沖縄・
南九州で収穫され北上、7月に北海道でゴールする。ソバはこれで終わらず9月に再び北海道から2か月かけて南下、11月中
旬に南九州に至る。前者を「夏ソバ」と言い後者を「秋そば」と呼ぶ。桜・紅葉よりむしろ「鰹」に似ているというべきか。「夏ソバ」
は日本列島の北半分に多く、「秋ソバ」は南半分に多い。また中間型もある。「夏ソバ」は開花が早く開花期間が短く背丈が低
「秋ソバ」はその逆の特性を持つ。夏ソバを夏播きしたり、秋ソバを春播きすると収穫量が悪くなるという。各地の自然風土
に順応し生き残ってきた証であろう。味は「秋ソバ」に一日の長があるため、”新蕎麦”の呼称は「秋ソバ」に限られるという。
尾形(大阪・富田) 12-12-11 渚庵(大津)  12-3-21 真心(京都・西京) 11-5-18
阪急富田駅近くにある洒落たお店。坪庭
があり円天井に、丸太で作った椅子と大
きな卓。小上がりもあって店主のセンスが
窺われる。蕎麦は福井産、艶のある硬め
の二八。五穀米が付いている。
琵琶湖に近い。湖岸通りから少し入った
処にある。大津には珍しい出石蕎の皿蕎
麦。門から長いアプローチが続く、元寿司
屋を改築したという。拘りは水。兵庫の松
か井の名水を使用する。
西京区役所の裏にある。看板の多い店
店内は明るく16席。ご主人夫妻と蕎麦屋
には珍しく若い女性従業員が二人。蕎麦
は北海道産粉の十割と二八。十割は自家
挽き粗。二八はよく繋がっている。
手打ちそば 「手打ち蕎麦」とは機械を使わずに人手で打った蕎麦のことだと一般に理解されている。確かに生麺の表示
に関する公正競争規約には「手打ちとは、粉に加水し混ぜた後、麺棒で延し包丁で一定の長さに切る・・その全てを手作業によ
り行うこと・・但し粉と水を混ぜるのは機械で行うも可」(第四条・筆者略)とされている。ところが、江戸時代に出版された「守貞謾
稿」(1838年)に「真の手打ち蕎麦屋には二八の駄そばはうらず」という一節があって話が少しややこしくなる。製麺機が発明され
たのは1883年(明治16年)で、江戸時代には存在していなかったからだ。江戸時代の「手打ち蕎麦」は「駄そば」(つなぎを5割以
上も使うような安物)への反義語だったと考えられる。丁寧に心配りをして蕎麦粉だけで打った上質の蕎麦の意であったのでは。
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