It`s only soba、but it`s soba              13-10-1
 「うまいから、うまいのではなく、うまいまずいは別にして、うまいのである」と言った内田百閨i「無絃琴」)は”昼食を蕎麦”で通した。
田山花袋・久保田万太郎・川口松太郎等は連玉庵の常連であった(澤島孝夫「蕎麦の極意」)というし、夏目漱石は「吾輩は猫であ
る」「ぼっちゃん」で蕎麦の薀蓄を語っている。物書きには蕎麦好きが多いのか。江戸人情を書き尽くした藤沢周平・池波正太郎・平
岩弓枝・山本一力の蕎麦好きは当然として、食通で通る山口瞳・筒井康孝も蕎麦狂いと聞く。山口は「冬は鴨南蛮、春夏は天抜きと
樽酒、締めはモリ」と決めていたという。だが、花柳章太郎・宇野重吉・先代市川海老蔵・五代目小さん・志ん朝・当代正蔵・渡辺貞
夫・山下洋介等・・と蕎麦好きは各界に広がる。国会にも「蕎麦を愛好する会」があると聞く。It`s only soba、but it`s soba。なのだ。
遊時(京都・桂)  13-3-25 一花(西宮・苦楽園)  09-7-7 森久(山形・東根市)  09-10-19
阪急桂から徒歩5分。こじんまりした夫婦
二人のお店。京都では珍しい戸隠そば、
同じ京都の「実徳」で修業した。開店11
年。十割自家挽き・八ヶ岳産粉を使う。ご
主人は職人気質の拘りの人である。
苦楽園駅から徒歩15分。重量感のある
扉を開けると静かな空間が現れる。中央
に一枚板の大卓がある。創業者は08年
病で逝去された由。現在は知人が跡を継
ぐが、生麺を仕入れているという。
山形空港から車で10分。100人以上は
収容できる大型店舗。板そば(大森)を
注文。やや黒く太いごわごわした硬い田
舎蕎麦。来迎寺在来種。サラダと漬物が
セルサービスで食べ放題。
迷亭先生と蕎麦 漱石の「吾輩は猫である」に、吾輩の飼い主である苦沙弥氏の友人・迷亭先生が「蕎麦の食べ方の講釈」
をするところがある。「蕎麦はツユと山葵でで食うもんだあね」。苦沙弥氏が「僕は饂飩が好きだ」というと、「饂飩は馬子が食ふもん
だ。蕎麦の味を解しない人程気の毒な事はない」と一蹴、「「初心者に限って、無暗にツユを着けて、さうして口の内でくちゃくちゃ遣
っていますね。あれじゃ蕎麦の味はないですよ・・・此永い奴へツユを三分一つけて一口に飲んで仕舞ふんだね。噛んじゃいけない。
噛んじゃ蕎麦の味がなくなる。つるつると咽喉を滑り込む所がねうちだよ」「笊は大抵三口半か四口で食ふんですね」と続く。迷亭先
生はこの後大失敗をすることになるのだが・・・漱石は「江戸っ子の蕎麦食い作法」をコミカルに、しかし皮肉っぽく描き出している。
Top