「木鉢三年、延し三月、包丁三日」というが・・        14-2-1
蕎麦では「木鉢三年、延し三月、包丁三日」というが、順番とは逆に見せ場・包丁仕事に関心は集まる。日本の包丁(人)の技
術・切れ味は間違いなく世界の頂点にある。和包丁の源流は日本刀であり、その発展は日本料理と歴史を共有する。和食の
最大特徴は刺し身に見るごとく「切る」ことにある。我国で「切れる男」「切れ味」のように「切る」という言葉が大事にされるのも
頷ける。蕎麦打ちの最終工程は「包丁」、仕上がりは包丁(切れ味)で決まる。蕎麦打ちが女性の手(家事)から蕎麦屋に移り、
打つ量が増え麺の切り幅・厚みも細くなるにつれ、包丁も重量化し把手の位置は「押切り」に最適な現在の形(写真)になった。
会津南西部に残る「裁ちそば」は普通の菜切り包丁が使われる。「包丁三日」というが蕎麦道具で最高価なのは包丁である。
 
新保屋(大阪・豊中) 13-11-6  上段:蕎麦包丁、下段:裁ちそば  白帆(滋賀・草津) 13-4-10
 



福井県芦原にある「新保屋」で越前蕎麦
打ちを修業し25年前に開店。「おろし蕎
麦」が売り。辛み大根も福井産。ご夫婦
で営業する、お馴染みさんが多い。ご主
人は仕事一途の話好きの好々爺だ。
上段:標準的は、長さ30・幅15cm・重量
1s。把手が重心に近くなっている。価格
:2万円〜10数万円まで多様。下段:
会津
・桧枝岐村の「裁ちそば」は延した麺体を
畳まず「引き切り」する珍しい例と言える。
近江八景「矢橋の帰帆」から白帆という名
前が付けられたのであろう。名前にふさ
わしい爽やかな佇まいのお店。ご夫婦二
人で経営する、店内はこじんまりとした清
潔感がある。ご夫婦の人柄が偲ばれる。
 
堺と包丁日本の包丁処は言わずと知れた大阪・堺、岐阜・関、新潟・三条の三か所。中でも堺はプロが使う包丁の9割を占め
る。堺と包丁の縁は古くて深い。鍛鉄技術が堺に伝わったのは5世紀頃、古墳建造に必要な鍬・鍬製造のためであった。平安
末期からの武士勃興に伴って技術は日本刀に引き継がれ、更に室町時代には煙草の輸入が始まり、葉を刻む包丁が製造され
るようになった。このタバコ包丁の切れ味が抜群であったため徳川幕府専売となり、一躍堺の名が全国に轟くことになった。明
治の「廃刀令」で刀匠が鍛冶職人に技術は引き継がれた。堺の「打ち刃物」は硬度が高いので「切れ味」が鋭く手前に引いて切
る。逆に「叩き切り」をすると刃が毀れる。その堺も需要の減退で苦戦が続く。職人がいなくなれば技術も途絶えることになる。
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