秘境に生き続ける「祖谷蕎麦」の伝統              14-1-4
 
          
 平家の落人伝説は全国各地にある。祖谷もその中の一つである。剣山(1995m)を源とする祖谷川がつくる急峻なV字型渓谷
にあり、岐阜の白川郷、宮崎の椎葉村と並んで日本三大秘境のひとつに数えられる。屋島の戦いに敗れた平国盛が残党30数
人と共に源氏の手勢に追われ逃げ込んだといわれる。人の移動を拒絶するような急峻な斜面地、渡ると激しく揺れる蔓の吊橋な
ど、落人伝説を首肯させるに十分な秘境である。日照が少なく山深い急傾斜地であるめ稲作に適せず「いも・ソバ・稗」等が住人
たちの常食であった。水捌けの良い急斜面、昼夜の寒暖の差等、ソバ栽培には好適地だからだ。短くて太く荒々しい祖谷蕎麦
は現在もなお健在である。「祖谷の粉挽き唄」は今も愛唱される、この地に生きた女達の蕎麦粉挽きの"仕事唄”なのである。 
祖谷美人 13-11-19 上:かずら橋、下:東祖谷の民家 もみじ亭 13-11-19

隠れ宿も兼業。温泉・露天風呂もある。テ
ラス席から見た祖谷川は絶景(裏)であ
る。十割の祖谷蕎麦は太切り、ややごわ
ごわしていて切れやすい。「でこまわし」等
の郷土料理も豊富で楽しませてくれる。
かずら橋:蔓で編まれた橋。ライトアップ
された姿は幽玄と表現すべきか。
東祖谷の民家:急峻な山肌に貼り付くよ
うに点在する民家と畑。稲作に不適であ
ることは一見してわかる。
大歩危(吉野川)の絶壁の上に建つ。店内
からその抜群の景色(裏)が一望できる。
店は祖谷から移築した築200年の古民
家。柱・・梁・机などは全て古木が使われ
ていて風情がある。
「痩せ地」とソバ ソバは吸肥力・吸水力が際立って強い。そのため「ソバは痩せ地に適する」と言われるが、それは俗説で、
正しくは「ソバは痩せ地にも強い」というべきだ。現に美味しい蕎麦作りを目指して土壌作りに励む農家がある(「常陸秋そば」浪川
寛治著)。その他、酸性土壌でも育ち、加えて他感作用があるので雑草の生育を阻む特性がある。播種後わずか75日で収穫でき
るのも大きな利点であろう。蝦夷地等の開拓地でソバが活用されたのもこのような特性のためであった。縄文時代から続く伝統的
な焼き畑でもソバは格好の作物と考えられている。土地を有効活用するためには輪作(例えばタバコ→ソバ→コムギ)をするのが
普通であるが、吸肥力の強いソバは前作(タバコ)の残肥で十分である上に、後作(コムギ)の肥料調整もやり易くなるのである。
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