石臼が人間の食文化を創造した                   14-6-1
石臼の発明は1万年も前のこと。野生植物の種子を主食にする必要から生まれたというから、石臼の歴史は人類の文明史そのもの
だといえる。わが国での初見は日本書紀の「推古天皇の十八年(610)・・・はじめて碾磑を造る」という記述である(三輪茂雄「粉と臼」
)。その後数百年の謎の空白期間があって、臨済宗開祖・栄西(1141〜1215年)が中国より伝えた「茶の湯」の茶臼として寺院に広く
普及することとなった。ところが茶臼には思いがけない用途があった。種子島の伝来(1543)が火薬の製造を急務としたのである。戦
国時代に全国の石工が学んだ石臼の製造技術は、屑米・蕎麦・麦等の雑穀の製粉に活用されるようになり、農民の生活に大きな変
化をもたらした。現在も石臼は抹茶製造用・蕎麦製粉用として活躍中である。豆腐・豆乳・珈琲にも次第に範囲を広げつつある。
 
蕎麦yuki(京都)  14-4-27  上段は抹茶用、下段は珈琲用  やぶそば(大阪) 11-4-18

平成25年に京都北山通りに開店。「味禅」
で修行したという若き女性店主の店。蕎麦
は信州・安曇野産粉の十割。女性のセン
スを生かして北山通りに相応しいお洒落
で落ち着いた店内になっている。
抹茶は10ミクロン以下の微粉末でなるべく
均一に 粒度分布することが旨いお茶の必
要条件。これに対し珈琲は0.5〜1o、蕎麦
は100〜250μ、小麦は50〜150μ。抹茶
は専用石臼でないと挽くことが出来ない。
神田藪そばから暖簾分けで独立し、大阪
帝国ホテル横に同時開店した。藪そば独
特の「ウグイス色」のお蕎麦、クロレラを入
れて着色している。長く繋がったやや少な
目の盛りだ。三箸半へのこだわりか。
 
石臼と食物 穀類を粉にすることによって人類の食生活は格段の進歩を見せた。現代になり大規模な機械製粉が可能になった
が、石臼の貢献するところは大きかった。小麦の粉食として第一に挙げられるのは麺麭、続いて麺類(パスタ・うどん・餃子等)である。
殆どは大型機械製粉であるが、「石臼挽き麺麭」を標榜するお店も少なくない。珈琲は一般には専用のコーヒーミルが使用されるが、
石臼挽きを好む好事家も多い。日本独特なものとして「蕎麦・豆腐・抹茶」がある。豆腐は湿式の石臼を使い、抹茶は普通の花嵐岩で
はなく特別に輝緑岩を使い数ミクロン単位の微粉末を挽き出す。蕎麦屋は「石臼と篩い」を使って自分好みの蕎麦粉を創る。いずれの
場合も「石臼挽き」は独特の味わいとなるのだが、大量生産には向かない。熟練と労力(電動もある)が必要とされるからである。
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