古民家を愛する蕎麦屋たち               13-11-1  
 「古民家蕎麦屋を愛する会」が東京に誕生したと聞く。それで気が付いたのだが、古民家を店舗にする店著名老舗だけに限っ
たわけではない。わわざわざ田舎から移築する店もある。何故、蕎麦屋は古民家に拘るのだろうか。谷崎純一郎は日本建築の特
徴を次のようにいう「屋根という傘を広げ日陰を作り、その薄暗い陰翳の中に家づくりをする。西洋の建築は反対に出来るだけ陰
を作らない・・また「薄暗い家に住み慣れた先祖は、いつしか陰翳の内に美を発見し、それを利用するに至った」(「陰翳礼讃」)と
も言う。とすると、我々が古民家で感じる”あの気持ちの安らぎ”は日本人共通する遺伝子の為せる業なのか。大屋根の下に格子
と障子と欄間が作る微妙な陰影の中で蕎麦を啜ることに安らぎを覚える、これまさに「日本人の美意識」の極致ではないだろうか。
 
 一真坊(篠山市) 13-9-26  古民家とソバの花  幸村庵(和歌山・九度山) 13-9-7

古民家を改造した蕎麦屋、今年1月に」移
転してきた。大部屋には囲炉裏がある。
店の造作、装飾、器にまで主人の拘りが
見える。径80pの麺体を畳まずに挽き
切る「裁ちそば」が看板。十割・長い。
 
 古民家(上)谷崎は「日本の屋根は傘、
西洋の屋根は帽子だ」という。
陰を作る
屋根と四隅まで光を採り入れる屋根。

ソバの花(下)可憐なソバの花には思
わず目を奪われる美しさがある。
 真田昌幸・幸村が関ヶ原以降隠遁した
九度山・旧邸のすぐ横に開店する。古民
家・・大広間を客席にする。座布団は六
文銭紋様。座敷奥には大坂の陣真田赤
備えの鎧兜が飾られる。粉は上田産。
 
 ソバの花言葉 花言葉と言えば「薔薇:情熱」「百合:威厳」などが頭に浮か。が、ソバの花言葉を問われて答えられる人は
少ないだろう。「懐かしい想い出」「喜びも悲しみも」「あなたを救う」がそれなのである。花言葉はギリシャ・ローマの神話・伝説から
出たものが多いらしいが、日本独自の風土から生まれた花言葉もある。そこでソバの花言葉だが「小さく純白で可憐なソバの花」
から”懐かしい・喜び・悲しみ”は容易に想像されうるが、「あなたを救う」というのがもう一つ判らない。「救荒穀物だから人を救う」と
いう説明では、想像力が欠落しているとの誹りを受けよう。色々探索しているうちに五島列島に伝わる”ソバの花の伝説”に辿り着
いた。隠れキリシタンとソバ農民との心温まる話である。ソバ花の優しさと75日という超短期栽培とがつくった心優しい伝説なのだ。
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