日本の郷土蕎麦(西日本編)                       15-5-1
中国雲南山地を中心に東西に照葉樹林帯(シイ・カシ・クス・クリ等)が広がり西端にヒマラヤ、東端に日本がある。この樹林帯に共通
する文化の存在を故中尾佐助・佐々木高明氏が指摘した(「稲作以前」佐々木高明著)。水さらしの技法・茶の加工と飲用・絹・漆の
製造・麹を使う酒の醸造、さらには儀式としての共同狩猟・精霊信仰・歌垣の慣行、そして芋・雑穀を栽培する焼畑農業などである。
北九州から西日本一帯に焼畑農業が広がったのは縄文後・晩期だと言われる。ソバは、ヒエ・アワ等と共に焼畑農業の主産物で
あった。九州の椎葉・五ッ木、四国の東祖谷・椿山、北陸の白峰等は数十年前まで広範に焼畑が行われていた。弥生時代の稲作の
伝来によって西日本の農業は一変したのである。北方渡来の東日本「ナラ林文化」、畑作中心の農業とは歴史を異にすると言う。
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越前おろし蕎麦(福井県) にしんそば(京都府) 宝来そば(京都府) 熱盛そば(大阪府・堺)
かやくそば(大阪府) 出石そば(兵庫県・出石) 出雲そば(島根県・出雲) 租谷そば(徳島県・東租谷)
対馬そば(長崎県・対馬) 椎葉そば(宮崎県・椎葉)  月桃そば(沖縄県・那覇) 番外・ダッタンそば(モンゴル)
    
ダッタンソバ 中国四川・雲南省の高地に住む少数民族の彝(イ)族は罹病率が極めて低いという。何故か、彼等はダッタンソバを
毎日三度欠かさず摂取する食文化を持つ。ダッタンソバはルチン(ポリフェノール)を普通ソバの100倍以上含有しているとの報告が
ある。ルチンは毛細血管を強化する効力があり、高血圧・高脂血症・心臓病等の予防に有効であることが判っている。ソバには「普
通ソバ・ダッタンソバ・宿根ソバ」の三種があって、ダッタンは普通ソバの生育限界を超える高地(3500m〜)でも栽培可能で、耐寒性
と高地紫外線から身を守るルチンを大量に作っていると考えられている。ところで、ダッタンソバの名は学名Fagopyrum tataricum(タ
タール人のソバ)に由来する。タタールは日本語で韃靼となる。苦味のある蕎麦は日本でも食され、北海道で栽培も盛んである。